登壇レポ #1|政治の “めんどくさい”をハックする、シビックテック奮闘記@ぶり会議2026
目次
政治の知識ゼロから始める、OSS “Polimoney” によるデジタル民主主義の構築

2026年1月9日に、エンジニアたちの祭典「ぶり会議」にて、ひとつの刺激的なセッションが注目を集めました。登壇したのは現役大学生エンジニアとして活動するharuki氏です。
テーマは「デジタル民主主義、政治抜きで」。
その内容は政治思想を語るものでも、特定の政党を支持するものでもありません。あくまでエンジニアの視点で、社会に存在する善意の工夫が生んだジレンマをどのように再構築していくかという、泥臭くも希望に満ちた開発記録を発表しました。
政治の世界は「バグ」だらけ?
「私たちが普段ITの世界で当たり前としている常識が、政治の世界では通用しません。そこには法律と運用実態が大きくかけ離れている政治の世界ならではのバグが存在していると感じています」
haruki氏が紹介したのは、デジタル民主主義2030のプロジェクトPolimoney(ポリマネー)での活動です。このプロジェクトは政治とお金にまつわる複雑なデータを、テクノロジーの力で誰もが扱える形に変えていくシビックテック1)の取り組みのひとつです。
彼を突き動かしたのは、行政手続きの圧倒的なアナログさへの違和感でした。「紙に書き、ハンコを押し、数週間待つ。技術的には大学生でも自動化できることが、なぜか進まない」その原因をコードで解き明かすため、プロジェクトに参加しました。
1)シビックテック
シビックテック(Civic Tech)とは、シビック(Civic:市民)とテック(Tech:テクノロジー)をかけあわせた造語。市民自身が、テクノロジーを活用して、行政サービスの問題や社会課題を解決する取り組みをいう。
引用:SBクリエイティブ株式会社, シビテックとは【用語解説】, ビジネスIT, 2016-05-01, https://www.sbbit.jp/article/cont1/32211
たった1つの申請で、自治体ごとの大量フォーマット・OCR泣かせなPDF
セッションの中で会場のエンジニアたちから反響があったのは、データの収集・解析に関するものでした。
「技術的に難しいアルゴリズムが必要なわけではありません。ただ、圧倒的にめんどくさいんです」
彼が向き合っているのは、全国の自治体がこれまでの管理体系に合わせて運用してきた、膨大な政治資金収支報告書のPDFです。そこにはデジタル化の過渡期ゆえの構造的な課題が横たわっていました。

- OCR(文字認識)すら拒む手書きの書類
- 現在の自動解析技術にとっては制度の限界に挑む大きなハードルです。
- 自治体ごとに異なる、独自のフォーマット
- 地域の事情に合わせて最適化された多様なフォーマットは、外部からのデータ統合を困難にする要因となります。
- 善意の工夫が生んだジレンマ 「技術的負債」
- 分かりやすく、と凝らされた独自のレイアウト変更が、システム解析においては予期せぬノイズなってしまう実態。
「記入事項はどれも同じなのに、なぜこんなにバラバラなのか。公開されているPDFを比較検討することすら面倒と感じることこそが、市民と政治の距離を遠ざけている壁の正体でした」とharuki氏は語ります。
“めんどくさい”の先にあった、大学生ならではの貢献
「Polimoneyは技術的にこだわり抜くような難しい開発ではない。それが、大学生の私でも飛び込めたPolimoneyの大きな魅力です」haruki氏は自身の活動をそう振り返ります。
この参加しやすさを下支えしているのは、膨大かつ地道なデータの正規化作業です。全国から集まる無秩序な数字の羅列を構造化し、誰もが直感的に理解できる視覚的なデータへと再構築する。このカオスを整理するプロセスにエンジニアリングとしての純粋な面白さを見出すことが、彼の開発における継続的な動機となっています。
「社会課題の解決」という言葉に重圧を感じさせないのは、彼の活動の根底に「コードによる実装」や「整理の効率化」という技術的な知的好奇心が据えられているためです。そのロジカルなアプローチは難解とされがちな政治という領域を、誰もがアクセス可能なプロダクト開発の対象へと定義し直し、参加者へ提示する形となりました。
高度な技術や専門知識の有無に関わらず、目の前の仕様の不備(バグ)を一つずつ解消していく。その着実な積み重ねが、結果として社会システムのアップデートに寄与する。そこには、シビックテックにおける一つの合理的かつ等身大な貢献のモデルが示されていました。
読者へのメッセージ | 2030年の当たり前を作るために
レポートの最後に、haruki氏はこれからの展望とメッセージを贈りました。
「いきなりすべてを理解しようとしなくて大丈夫です。まずはChatGPTに『シビックテックってなに?』と聞くところから始めてみてください。最新技術を使って、この社会の”めんどくさい”に挑む人が少しでも増えれば、私たちの未来はもっと使いやすくなるはずです」
政治を語らず、コードで社会をハックする。彼の自然体な開発姿勢は、私たちの民主主義が「自分たちの手でアップデート可能であること」を強く証明していました。
ぶり会議の名の通り、豪華なぶりの花造りとしゃぶしゃぶ用の食器などが準備されている様子。
コラム | Polimoneyが目指す、政治とテクノロジーの新しい関係
haruki氏が開発に携わるPolimoneyは、単なるビジュアルツールにとどまらない本質的な課題解決を目指したオープンソースプロジェクトです。
「見えない壁」を壊し対話の土台をつくる
Polimoneyが挑むのは法律の抜け穴と技術の障壁という二重の不透明性です。 行政から公開される「検索も集計もできない画像PDF」というジレンマを、機械判読が可能なクリーンなデータへと再構築。さらに複式簿記をシステムに導入することで、不記載や裏金を許容しない透明性の高さと見やすいデータ構造により、政治家と市民の間に建設的な”対話の土台”をつくることを目標としています。
あなたの「ちょっとした興味」が力になる
政治資金の透明化には、Polimoneyのようなデータの構造化と大衆化に加え、リアルタイム監査を目指すプロジェクトや網羅的なデータベースなど多様なアプローチが必要です。
Polimoneyは誰でも活動に参加できるOSS(オープンソースソフトウェア)です。 「政治のことはよくわからないけれど、コードを書くのは好き」「データの整理なら手伝えるかも」 そんな技術的な好奇心こそが、2030年の当たり前を作る原動力になります。
まずは公式サイトで公開されている情報をチェックしてみたり、GitHubを覗いてみたりすることから始めてみませんか?あなたの「ちょっとした興味」が、最前線でコードを書く人たちの支えになります。